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シミを作る色素細胞(メラノサイト)は悪者なの?

色素細胞は肌の弾力とハリを司る重要な細胞

「色の白いは七難隠す」

ということわざを知っていますか?

「肌の色が白いと、多少の欠点があってもそれを補って美しく見える」という意味なのですが、実はこの言葉、江戸時代に書かれた滑稽本「浮世風呂※1」に出てきた

言葉なのだとか。

※1)作者は式亭三馬。文化6年(1809年)から文化10年(1813年)にかけて刊行された。当時の庶民の生活を浴場を舞台に様々な人々の仕草を詳細に描いた作品。

参照)https://100senmaru.com/ironoshi-7mdikao0/

江戸時代、文化年間に「都風俗化粧伝」というメイクのハウツー本が出版され女性のバイブルになりました。当時の化粧は、赤(口紅、爪紅)・白(白粉)・黒(お歯黒、眉作り)の3色が中心で、女性たちが特に熱心に行なったのが、白粉化粧。

色白は美人の第一条件でした。

参照)https://www.jcia.org/user/public/knowledge/history

つまり、肌が白いということは美の最大の条件であるという、色白信仰は古く江戸時代から続いていたのです。

ところが、そんな色白の敵とも言えるシミの元、メラニン(メラニン色素)を生み出す色素細胞(メラノサイト)って、実は肌の弾力やハリを司る重要な細胞なんだってこと、知ってますか?

肌の色を決めるメラニン

私たちの肌や毛髪の色はメラニンの量や種類で決まります。

メラニンには2種類あり、遺伝によってその比率が決まっています。

・ユーメラニン(黒色メラニン)

黒い髪、黒い肌を作ります。黒人のメラニンは、ほぼユーメラニンです。私たちアジア人も多く持っています。

・フェオメラニン(黄色メラニン)

透明感のある白い肌を生み出すと言われています。フェオメラニンを持つ白人の肌は透けるように白く、髪は金髪に近くなります。

アジア人はユーメラニンとフェオメラニンを両方持っている混合型で、肌は黄みがかっており、髪は黒から茶色の人が多いのが特徴です。

メラニンは、皮膚や毛髪の色を決める一方で、シミやそばかすの原因となりますが、メラニンの最も重要な役割は紫外線防御です。

具体的には紫外線をメラニンが吸収するのです。

体内でメラニンを生産するのは色素細胞(メラノサイト)です。

色素細胞は、表皮と真皮の境目である基底層に存在し、紫外線が真皮に届かないようにブロックするためにメラニンを生成し、紫外線による皮膚の傷害や悪性腫瘍(光発がん)、光老化を防御しています。

参照)https://www.dermatol.or.jp/qa/qa20/s1_q05.html

https://www.doctors-organic.com/merano/index.html

シミができる理由とシミの種類

“シミ“とは、皮膚の中にメラニンが蓄積され、地肌の色よりも濃く見える部位のことです。

シミにはいくつか種類があります。

  • 老人性色素斑(日光黒子)

多くの人が考えるシミはこの老人性色素斑です。紫外線の影響によってできる淡褐色~濃褐色のシミ。

  • 脂漏性角化症

老人性色素斑を放置したまま紫外線を浴び続けることで、シミの輪郭が広がり色が濃くなってイボのようになった状態のこと。

  • 雀卵斑

いわゆるそばかすのこと。欧米人に多く見られるシミで、紫外線によって過剰にメラニンが作られた状態。遺伝的も大きく関係する。

  • 肝斑

女性ホルモンのバランスの崩れが原因と言われる頬骨のあたりに沿って左右対称にできるしみのことを言います。輪郭がはっきりしておらずもやもやっとした形でできることが特徴で、目の周囲にはできません。

  • 炎症後色素沈着・一過性色素沈着

肌を強く擦ったりなど外側からの物理的刺激や肌の炎症を起こした後にできるシミ。時間の経過とともに徐々に薄くなっていくことが特徴ですが、紫外線を浴び続けたりターンオーバーが正常に行われないとそのまま濃く残ってしまうこともあります。

シミはそれぞれ症状や特徴などが異なりますが、共通しているのは紫外線が原因だということ。そのため、どの種類のシミであっても紫外線ケアをしていくことが必要です。

紫外線を浴びると、表皮の最下層である基底層で、真皮を守るために色素細胞からメラニンが生成されます。基底層は表皮の細胞が生まれ、上へと押し上げられいくターンオーバーのスタート地点です。つまり、通常であればメラニンが生成されても、ターンオーバーによって垢となって剥がれ落ちていきます。

ところが、紫外線を浴び続けるとターンオーバーで排出される前に新たなメラニンが生成されることになります。

加えて、加齢などによるターンオーバーのサイクルの遅れでメラニンの排出がうまくいかなかった箇所がシミとなってしまうのです。

 

シミを作る色素細胞は美肌の味方

色素細胞は表皮の基底層に存在します。

真皮と表皮の境目には真皮乳頭層と呼ばれる波打つような形状の真皮側の境界域があります。毛細血管が入り込み表皮に栄養や酸素を供給する役割を持つ層なのですが、その波打つ形状は、肌が引っ張られても元に戻れるように、アコーディオンの蛇腹のような役割を果たしています。言い換えれば、真皮乳頭層があるおかげで、肌は指で押してもすぐに元に戻ることができる弾力をキープしています。

この蛇腹を維持するのに欠かせないのが色素細胞なのです。

色素細胞は、真皮乳頭層の上で鎖のようにたくさん連なって蛇腹を支えています。

色素細胞がなくなると蛇腹は維持できなくなります。すると、押しても戻る肌の弾力は失われ、のっぺりとした肌になってしまいます。

できてしまったシミを手っ取り早く消すために、レーザー治療を選択する方も少なくないでしょう。

ところが、Qスイッチ・ルビーレーザーなどのいわゆるシミ取りレーザーと言われるものは、シミとなるメラニン色素を過剰に持つ色素細胞を選択的に破壊しています。

色の白さを求め、色素細胞を目の仇にして破壊するような美容法は、実は肌の弾力を害わせることにつながっているのです。

シミは消すのではなく作らせない

色素細胞は、真皮乳頭層の上に鎖のように連なり敷き詰められて、肌の弾力やハリを維持する上でも重要な役割を果たしています。

しかし、できてしまったシミを消すために色素細胞を破壊したり、その機能を低下させるようなことをすると、肌は弾力を失うだけではなく、バリア機能をも失うことになります。

そんな色素細胞と肌の崩壊との関係は、認知症の患者さんでよく見かけられます。

なぜならば、色素細胞は神経の一種であり、脳の神経細胞がダメージを受ける認知症の患者さんでは、色素細胞も破壊されてしまうからです。

神経は、脳の神経細胞から脊髄へとつながり、さらに臓器や肌など全身を結ぶネットワークを構築しています。

神経への脳からの指令は“神経伝達物質“によって伝えられるため、脳の神経細胞が壊れると全身への神経ネットワークも崩れて行きます。当然、肌という身体の末端に存在する神経系の一種である色素細胞の機能もダメージを受けます。

認知症の患者さんは寝たきりになり、「褥瘡」という床ずれによる肌組織の壊死が起こることが多々あります。

これは、脳の神経細胞が少なくなった影響を、同じ神経系の色素細胞も受けてしまうことで、肌の弾力やハリが失われ、寝ているときの身体の重みに耐えられずに、肌の細胞が圧迫されて死滅していくことが原因です。

加えて、人間の肌には目に見えない細菌がたくさん存在しています。

肌の細胞が破壊されれば、当然肌表面のバリア機能も壊れ、細菌が肌の奥へと入り込み、増殖して炎症を起こし、結果として肌は壊死してしまうのです。

褥瘡では、穴があいたように肌の組織が抜けます。これは色素細胞を失ったことが要因であることにほかなりません。

このように、脳の神経細胞と色素細胞は間接的なつながりがあります。

色素細胞は、シミの元を作り出す敵ではありません。

健康的な肌を維持するための強い味方であり、しっかり働いてもらうことこそが大切なのです。

そのためにやらなければならないのは、色素細胞を敵視した化粧品などによるケアではなく、色素細胞を保護するケアなのです。

ちなみに、脳からの指令を受けなくても瞬時に反応できる仕組みを神経組織は持っています。

例えば、手が熱い鍋に触れた時、私たちは熱いと感じると同時に手を鍋から離します。頭で「熱いから手を離そう」と考える前に行動しているわけですが、このように、脳で考えて指令を送るというよりも、脊髄や末梢神経で瞬時に反応できる仕組みを神経組織は持っています。

神経の一種である色素細胞も、紫外線を強く浴びた時には、真皮を防御すべく自然にメラニンを作り出すように設計されています。

脳からの指令がなくても色素細胞自体が反応しているのです。よって、シミを作りたくない一心で「メラニンを出すな」といくら考えても無意味で末端の神経系で行われている反応はコントロールできませんので悪しからず。

参考文献)保湿とUVケアだけが美肌を作る 第2章

シミを作らないための“バリア肌“作り

20代から一生懸命美白に取り組んでいたにもかかわらず、30代以降になるとシミ

ができてしまったという人は少なくありません。

それはなぜかというと、多くの場合は、スキンケアに対する考え方と方法が間違えていたからだと考えられます。

スキンケアの目的はとても簡単。美白やコラーゲンなどの美容成分を補うことではありません。

紫外線などの肌本来の機能を奪う外的要因から肌を守る“バリア肌“を作ることです。

バリア肌になるために心得ることはこの3つだけ。

  1. 紫外線からバリア
  2. 乾燥からのバリア
  3. 刺激からのバリア

1.紫外線からのバリア

紫外線にはUVAとUVBがあり、UVAは屋内にいても肌の表皮を突き進み真皮に到達、コラーゲン繊維とエラスチンを破壊。肌のハリや弾力が失われ、たるみやシワの原因になります。

UVBは表皮の色素細胞を活性化させて多量のメラニンを生成させ、日焼けや表皮細胞の遺伝子に傷をつけ、シミや皮膚がんの原因になります。

強い紫外線は色素細胞を活性化させると同時にダメージも与えます。

真皮を守るために24時間体制でメラニンを作り、疲れ果てると同時に紫外線からの攻撃で色素細胞そのものが破壊されてしまいます。

紫外線からのバリアの方法は、UVケアで紫外線をカットするしかありません。

日焼け止めはPA(UVAをカット)とSPF(UVBをカット)の2種類の両方の表示があるものを選び、また、紫外線吸収剤を含まないものをチョイスしましょう。

直射日光に当たる時間が15分以内なら、日焼け止めではなく日傘や帽子などを活用しても大丈夫です。また、日陰や曇りの日でも紫外線は降り注いでいますので油断することなく紫外線をカットしましょう。

 

2.乾燥からのバリア

バリア肌の鍵は表皮の一番外側の角質層です。

角質層は異物が肌の中に入り込むのを防いだり、水分を蓄えるなどの機能があり、

潤った肌は角質層の水分保持力で決まります。

角質層を構成する角質細胞には、水溶性で保湿力の高い天然保湿因子(NMF)

があります。その間を埋めるのがコレステロール、セラミドや脂肪酸などの細胞間脂質ですが、細胞間脂質の約40%がセラミドです。セラミドは水をはさみ込んでキープするので水分保持力が強く、また、角質細胞と角質細胞をつなぐ役目もしています。

肌の乾燥は、角質細胞に含まれる天然保湿因子や細胞間脂質が減って細胞をつなぎとめる力が弱くなることで、バリア機能が低下し、水分が逃げてしまった状態です。

肌が乾燥する原因は、ターンオーバーの乱れ、暖房・冷房の長時間使用による空気の乾燥、紫外線によるダメージ、間違ったスキンケア、ビタミンB群の不足、加齢に皮脂分泌量の減少などがあげられます。

肌を乾燥させないためには、角質層の機能を守ることが何より大切です。

 

3.刺激からのバリア

角質層は、0.02ミリしか厚みがありません。

強くこすれば角質細胞は剥がれ落ちてしまいます。

角質層は垢とは異なる肌の保湿機能を担う重要な部分です。

界面活性剤を使用したクレンジングや洗顔料で顔をゴシゴシ擦ったり、美顔器でのマッサージ、ピーリングで無理に角質を剥がしたり等のスキンケアは角質層を破壊してしまいます。

また、マスクの長時間の使用やティッシュで鼻を噛むという行為も肌にとっては刺激です。

わずかな刺激で角質細胞は破壊、剥がれてしまうのです。

皮膚は体を守る最大の臓器です。

ただ白ければ良いわけではありません。

美しい肌とは、表皮と真皮の役目がしっかりと果たされている肌のことです。

表皮のバリア機能がしっかり働き、正常なターンオーバーが維持されることで健康な表皮が作られます。それによって、肌のハリや弾力に関わる肌の本体である真皮の線維芽細胞(肌細胞)をしっかりと守ることができるのです。

参考文献)水とワセリンで美肌になる

 

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