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細胞の活性化ってどうして起こるの?コラーゲンを無限生成する創傷治癒の仕組みを理解しよう

肌の細胞の活性化とは?

“肌の細胞を活性化させることでコラーゲンの生成を促し、肌のハリや弾力を取り戻す“

切らないフェイスリフト術としてレーザー治療の代表的な存在であるHIFUや、光治療の代表格であるフォトフェイシャルなど、アンチエイジングの医療美容を行う際の効果効能としてよく聞く言葉です。

レーザーや光治療などのアンチエイジング系の医療美容では、真皮層まで届く波長のレーザーや光を肌に照射し、真皮の線維芽細胞の働きを活性化させ、コラーゲン生成量を増やし肌のハリや弾力を蘇えらせる、という作用機序※1であることがほとんどです。

 

“活性化“とは、沈滞していた機能が活発にはたらくようになることですが、

では、肌の細胞を活性化させるとは具体的にはどうすればよいのでしょうか。

実際に肌の細胞レベルで起こっていることを詳しく解説します。

 

※1)作用機序とは薬学分野でよく使う言葉で、「はたらきの仕組み」や「どうして効くのか」ということ。

 

細胞の活性化とは傷が治る仕組みのこと

「創傷治癒」という言葉をご存知ですか?

創傷治癒とは、“傷ついた皮膚を自ら治す体の機能“のことを言います。

私たちの皮膚は、内臓を保護するために外敵から身を守り、古くなると脱落して新しい細胞に置き換わっていきます。最大の臓器とも呼ばれる皮膚が損傷することを私たちは「傷」と呼びます。

できてしまった傷が治っていく様子、すなわち創傷治癒の過程には、3段階あることがわかっています。

 

①炎症反応期:血小板の凝集と血管収縮での止血

皮膚が損傷を受けると、皮膚が断裂し組織の破壊が起こります。

血管も断裂するため出血します。 血液に含まれている血小板は、断裂した膠原繊維(コラーゲン)に付着することで活性化します。 活性化した血小板から放出される凝固因子の働きで、血液成分が血栓を作り、それと同時に断裂した血管も収縮することで止血(止血作用)します。

血液の中には、色々な凝固因子が存在しており、損傷をきっかけに次々に働き出すという連鎖反応を起こします。

また、破壊された細胞からも様々な化学物質が放出され、これらの化学物質が周囲の組織に皮膚で異変が起こったというシグナルを送ります。

このシグナルに刺激されて血管からはリンパ球、多核白血球、単核球が抜け出して傷口へと移動(遊走)していきます。

これらの中の単核球が貪食(どんしょく)作用※2)によってマクロファージ(貪食細胞)※3となり、これがさらに色々な化学物質を放出して、次のシグナルの発生源になります。

このように、傷を治すために必要な細胞を傷口に呼び寄せる役割を果たす化学物質が「細胞成長因子」です。止血をする血小板は繊維芽細胞や好中球を呼び寄せる細胞成長因子を分泌し、マクロファージは繊維芽細胞を増殖させる細胞成長因子を分泌します。傷口では、傷を治すために最善のタイミングでさまざまな細胞成長因子が分泌され、そこに呼び寄せられた細胞たちが働いてます。

 

※2)貪食作用とは、体内の細胞が不必要なものを取り込み、消化し、分解する作用のこと。

※3)マクロファージは、死んだ細胞を食べて処理する免疫細胞。マクロファージの役割は、体に侵入した異物や自己の死細胞の掃除。

 

②増殖期(肉芽形成期):マクロファージが創面(傷口)の死んだ組織を取り込む。

マクロファージにより放出された物質が刺激となり、線維芽細胞が呼び寄せられ、修復の主な材料であるコラーゲンが生み出されます。 さらに、血管内皮細胞に対して血管を新生する指令もマクロファージから放出されます。

肌細胞の産生したコラーゲンに支えられて毛細血管が発達し、そこへ流れ込む新鮮な血液が線維芽細胞に栄養や酸素を供給、更にコラーゲンの産出を促すという自己増殖のサイクルが構成されます。

 

このように線維芽細胞と毛細血管がコラーゲンを足場とし、3者が支えあって共同作業を行い、いわば軍団のように傷口へ進出し、欠損部を埋め創面をくっつけます。

この欠損部を埋めていく軍団のような組織を肉芽組織といいます。

肉芽組織はコラーゲン以外の色々な物質やコラーゲンとコラーゲンの間に橋をかけて結合、補強しながらだんだんと真皮に近い丈夫な組織になっていきます。 この状態を瘢痕組織といいます。

通常、2~3週間で肉芽組織が完成し、数か月~数年かけて肉芽組織が安定した瘢痕組織に変わっていきます。

 

③安定期:線維芽細胞が分泌するコラーゲンを主体とした肉芽組織による修復

ここまでくると、線維芽細胞の活性が落ちてコラーゲンの生成が少なくなります。 最終的にはコラーゲンの生成と分解吸収がバランスよく行われ、見た目には安定して変化がない状態になります。

また、この時にコラーゲン産生能力が低下し、生成と分解のバランスが崩れると、分解吸収量のほうが多くなり瘢痕組織が吸収されて、結果的には傷が開いてしまいます。瘢痕組織は見た目には変化がなくても、常に生成と分解を続けている活動中の組織です。

こうして再生された表皮は傷を受ける前とほとんど同じになりますが、表皮細胞の下の組織は、真皮に置き換わるわけではなく、いつまでも瘢痕組織として残ります。安定期は傷跡として永久に続く期間と思ってください。再生した瘢痕組織はコラーゲンの配列が不規則なため、表皮を通してみた場合、真皮とは多少違って見えます。 これが「傷跡」です。

傷が治った後の皮膚の色の違いや、凹み、あるいは盛りあがっている、などの問題は、表皮で起きているのではなくほとんどが真皮での瘢痕組織の問題なのです。

 

つまり、一度傷をつけてしまうと、細胞レベルでは二度と元には戻らないのです。元通りになったように見えるのは、瘢痕組織の量が減り、正常の真皮に近づいているからであって、傷つく前の真皮と同じ組織ではないのです。

 

参照)https://www.woundhealing-center.jp/kizu/kizuato_howto.php

 

“細胞の活性化“という言葉のあや

美容医療は体が元々持っている機能を応用して治療に活かしていることが多く、美肌レーザーやHIFU(高密度焦点式超音波治療法)等によるたるみ治療などでの、「皮膚表面に影響を与えず、真皮の細胞を活性化し、新たな若々しい肌に生まれ変わらせる」というよくある説明を、文字通り信じてしまう方が多いのではないでしょうか。これが決して間違えているというわけではありません。確かに細胞が活性化されてコラーゲンは生成され、新たな皮膚組織が作られます。

しかし、それは創傷治癒によるものです。

そして、美容面で注目しているのは創傷治癒の初期の段階である炎症反応期での出来事だけなのです。

 

美肌レーザーによって肌の内部で起きていることを、創傷治癒の過程に沿ってみてみましょう。

 

顔にレーザーを照射します。

表皮を通り越し真皮にその熱が伝わります。

熱刺激を受けた組織は火傷(損傷)だと認識し、様々な細胞成長因子が放出され、異変が起きたというシグナルを送ります。

マクロファージが集まり、傷ついて死んだ細胞や細菌を貪食し、除去します。

線維芽細胞が呼び寄せられ、コラーゲンを生成します。

 

美容面で私たちが注目しているのは、ここまでですが、見落としていることがあります。

 

それは、安定期、つまり、肉芽組織による修復が終わる時期の線維芽細胞はコラーゲンの生成を通常通りの量に戻るため、永遠には続かないということです。

それまでは、緊急事態ですので昼夜問わず働いていた線維芽細胞が7時間労働の通常勤務に戻るわけです。

美肌レーザーなどの効果の持続期間が1〜3ヶ月と言われるのもこのためです。

 

レーザー治療で肌のハリを取り戻すことができた時、治療を行った部位の真皮組織は新たな真皮に置き換わるわけではありません。

そこは瘢痕組織と変化し、瘢痕組織はコラーゲンの配列が不規則です。

例えるならリフォームした家みたいなものです。

築年数が増え、補強のために柱を追加し、壁紙を張り替え、内装を整えると、まるで新築になったかのようです。

しかし、その設計図には本来あるはずのないところに柱があったり、その逆も然りで、本来あるべき箇所にデザインを重視したがために大黒柱が無くなってしまって強度が落ちてしまったり。

それを何度も繰り返していくと、最終的には強度はもちろん、見た目、機能も統一性のない、ごちゃごちゃな設計の家になってしまうでしょう。

レーザー治療だけに限らず、少なからず細胞を活性化させてコラーゲン生成を増やす治療では真皮レベルでこのようなリフォームを繰り返す家と同じことが起こっていると思ってください。

 

肌をリノベーションするのかリフォームするのか

築100年以上の古民家を利用したカフェやレストランなどが流行っていますが、その古民家はリノベーションされて現代になお価値を持って受け継がれています。

 

ここでいうリノベーションとは、「古い建築物の機能を今の時代に適したあり方に変えて、新しい機能を付与すること」※3)とされています。

 

住宅設備や建材は、時間の経過とともに、必ず老朽化します。つまり、住宅の“老化”です。

リフォームとは、老朽化した部分を新築時の状態に戻すこと、つまり原状回復です。

一方、リノベーションとはそのままの機能を活かし、付加価値を与えることです。

 

若返りのレーザー治療などは、肌のリフォームではないでしょうか。

老化によるシワやたるみの気になる箇所に熱損傷を加え、創傷治癒によって修復、老化する前に状態へと現状回復させます。

 

一方、肌の再生医療は肌のリノベーションではないでしょうか。

 

肌再生医療では、自己の細胞を培養、増殖して増えた細胞を老化の気になる部分に移植することで「若返り効果」「抗老化」が期待できる治療です。

創傷治癒による細胞の働きを利用するのではありません。線維芽細胞そのものの数を増やすので、当然、コラーゲンやエラスチンなどの美肌成分の生成能力も上がります。真皮の組織を損なうことなく線維芽細胞の数自体が増えるという付加価値が与えられた肌は、この先10年、20年と受け継がれる中で、人よりも遅く老化が進行するでしょう。

そして継続的に肌の再生医療による治療を続けることで、いつまでも線維芽細胞の本来の機能を活かし、若々しい肌を保つことができるのです。

 

レーザー治療などでは、いわゆる目に見える怪我とは違い、表皮では何も変化が起こらないため、肌の内部で起こっていることが損傷だとは考えにくいでしょう。

しかし、実際には真皮は損傷によるダメージを受け、一時的な肌のハリと引き換えに真皮の組織は瘢痕組織に変わってしまいます。創傷治癒による細胞の活性化は緊急事態を乗り切るための人体の自己防衛機能です。乱用することで、線維芽細胞が疲弊し、本来の寿命が短くなってしまうことも否めません。

肌の再生医療は一時的に満足を得るための対処療法ではなく、細胞自体が増える根本治療です。

年齢を重ねても若々しい肌を保ち続け、本当の美肌を手に入れるためには、まずは線維芽細胞を守ることが大切です。

古民家のように、年齢を重ねても若々しく現役でいられる肌作りを目指していきましょう。

 

※3)2018年3月に公開された国土交通省の『マネジメント型まちづくりファンドの設立』にあるリノベーションについての記載より。

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